右田百女句碑は、和歌山県高野山奥の院の関東大震災霊牌堂東側にある。
右田百太郎は福岡県出身の獣医学者で、妻の貞枝は高浜虚子に師事して右田百女と号した。
句碑表面上段には、獣医学博士右田百太郎の像が刻され、下段に次の句が刻されている。
うつくしく 物みな映れ 初鏡 百女
石碑裏面の銘板には、次のように刻されている。
右田百太郎ハ福岡県浮羽郡竹野村ニテ明治十四年一月二日常次郎ノ三男トシテ生レ
第二高等学校ヲ経テ 東大獣医学科ヲ卒業後 大学院ニ学ビ博士トナリ
獣疫ノ研究各種伝染病予防治療ニ盡瘁シタルモ 四十六歳ニテ歿ス
我ガ国畜産界ノ発展ニ貢献シタル偉業ヲ傳ヘテ碑トスル
百太郎ノ妻 貞枝ハ 伊予今治 森家ノ四女トシテ生レ 夫亡キ後 良ク家ヲ守リ
俳句ヲ百女ト号シ 虚子先生ニ師事シテ寵愛ヲ受ク
又佛教ニ深ク帰依シ 釈迦如来ノ講和ニ感銘シテ
うつくしく 物みな映れ 初鏡
ト詠ミ師ノ絶賞ヲ受ケタリ
昭和五十二年 晩秋 正典 刻
初鏡は、正月初めて化粧する顔を映す鏡である。
初化粧する華やぎのある顔を映す鏡であるが、句材として扱う場合は、その心を表現することが多い。
かがみは、影見(かげみ)が訛ったものという。姿を映すことから転じて、心を正す規範としての意味を持ち、
鑑(かがみ)(手本・いましめ)の意に派生していることを考えれば、心を映した句が多い。
(入門歳時記 新版 参照)
南海高野線高野山駅からバスで奥の院口下車、徒歩5分。